少女が老人に席を譲ります - セキュリティカメラが特別な瞬間をとらえていました！

地下鉄に乗っていたこの心優しい日本人の少女は、立ち上がって老人に席を譲りました。混雑した地下鉄の中で、ずっと老人を立たせていることなどできませんでした。

この老人の正体に気付いた少女の身に、信じられないことが起こります・・・

それは日本の首都の、いつもどおりの日でした。職場や学校に急ぐ人々で、地下鉄はごった返していました。

ラッキーなことに、ひな（19）は時間どおりに自宅を出ていました。学校に行くには長い間地下鉄に揺られていなければならなかったので、彼女にとって地下鉄で席を確保することは不要なぜいたくではありませんでした。

地下鉄に乗り込んだひなは、すばやく周囲に目を走らせました。ほとんどの席が埋まっていましたが、1つだけ空席がありました・・・

すばやくその空席に歩み寄り、通勤途中の女性の隣に腰を下ろしました。そして重たいカバンを床に置くと、安どのため息を漏らしました。

何とか間に合いました。1分でも遅ければ座る席はなくなり、目的地に着くまでずっと立っていなければならなかったでしょう。

でも今日は、忙しい美術学校の学生としての一日がまた始まるまで、ちょっとリラックスする時間ができました。

少なくとも、ひなはそう思ったのですが・・・

ひなが座ってからまだ15分ほどしか経っていませんでしたが、地下鉄がある駅に到着しました。また人々がどっと乗り込んで来ました。

長い列の最後尾に、杖を突いた高齢の男性が並んでいました。老人は、ドアが閉まる直前に何とか地下鉄に乗り込むことができました。

 老人は涙目をしばたたかせながら、地下鉄の中を見回しました。歩くのもやっとで、座席を探しているようでした。

男性はゆっくりと座席の間を歩いて行きましたが、人々は老人が目に入らないフリをしていました。ただ1人、ひなを除いて・・・

自分もやっと席を見つけて喜んでいたので、手放しで譲るというわけにはいきませんでしたが、その老人が自分よりも座席を必要としていることは明らかでした。

大きなため息をつくと、ひなは立ち上がってその老人を手招きしました。そして「どうぞお座りください」と、ニッコリ笑って言いました。

老人はこの親切にとても驚いたらしく、びっくりした表情でひなを見つめました。その瞬間、ちょっと奇妙なことが起こりました・・・

ひなはちょっと戸惑い気味に老人を見ていました。どこかで見たことがあるように思えるのですが、どこで見たのかは分かりません。彼女の祖父を思い出させるのでしょうか？

いいえ、そんなことがあるはずはありません。遂に老人がひなに感謝を述べると、ひなはもう気にしないことにしました。何かの偶然にちがいありません。

その老人は、地下鉄に乗っている間、終始感謝の表情でひなの顔を見ていました。そしてポケットに入っていた紙に何かを書き付けました・・・

地下鉄が終点に着いてすべての乗客が降りると、ひなは老人が地下鉄を降りるのを助けました。そしてまたニッコリ笑い、お気を付けて、と言いました。

自身も地下鉄を降りかけましたが、忘れ物をしたことに気付きました。座席の下にまだカバンを置いたままでした！

ひなは大急ぎでまた地下鉄の中に戻りました。カバンを失くしたりすれば、先生たちや両親たちは何度でもその話を繰り返すことでしょう。

急いで座席に戻ったひなは、何か別の物に目を留めました・・・

ひなが老人に譲った座席の上に、1通の封筒が乗っていました。ひなはちょっとためらってからそれを拾い上げました。あの老人が忘れて行ったのだろうと思い、老人がまだ見つけられるかどうか見回しました。

でも老人は当の昔に立ち去っており、ひなも学校の時間に遅れていました。座席の下からバッグを取り出すと、封筒を前のポケットに入れました。時間があるときにあの老人を探してみようと思いました。

封筒は確かにあの老人のものであり、ひなはそれを老人に返そうと思っていました。ただ、その日が終わるのはまだ先の話です。そして、ある特別なことが起こります・・・

重たいカバンと美術の備品を抱えて忙しく教室を移動中のひなに、少女たちの一群が駆け寄って来ました。

彼女たちは、「ひなちゃん、あなたテレビに出てるわよ！」と興奮して言いました。少女のひとりが自分の携帯電話を取り出すと、それをひなに渡しました。

何が起こっているのかわからないまま、ひなはその動画を眺めました。それは地下鉄のセキュリティーカメラが撮影したものでした・・・

突然、あの老人が動画に現れました。老人は有名なテレビ番組の司会者のインタビューを受けています。でも、このごく普通の老人が、どうしてインタビューを受けているのでしょう？

その答えはすぐに明らかになりました。「ひな、有名な映画監督を知ってたなんて、どうして黙ってたの？」と、少女のひとりが自分の携帯をひなの手から取り返しながら言いました。

その時ようやくひなにも合点が行きました。大きく目を見開いたひなは、少女たちを見つめました。「だ、だって、全然知らなかったのよ。ただのおじいさんだと思ってたから・・・」

とんでもありません。その監督は、座席の上に彼女への手紙を残していたのです・・・

少女たちはその手紙を開けて読むようひなに懇願しましたが、ひなは応じませんでした。そしてその日はそのまま、家に帰るまで封筒を開けませんでした。

帰宅するや否や、ひなは自分の部屋に駆け込みました。そして注意深く封筒を開け、手紙を開いて読み始めました。

手紙の中で、老人は繰り返し感謝を述べていました。老人はひなを「若者の模範」だと評しました。 

でもそれだけではありません。もっと大きな驚きがその後に控えていました・・・

封筒の中には、650万円分の小切手が入っていました！ひなは仰天して、そのお金をどうしたらいいのか分かりませんでした。

あの監督に連絡してお金を返す方法などありません・・・

そこでひなは、そのお金を使って特別なことをしようと思いました。地下鉄の車両内に高齢者専用の座席を設置するプロジェクトを始めたのです。そうすれば、例え誰も席を譲ってくれなくても、お年寄りが座る場所を確保することができるでしょう。